国立大学協会理事会は昨今の物価高騰や円安、運営費交付金の減少、働き方改革の推進などで財務状況が限界に達していることを訴える声明を発表した。現状打開に向け、国民の協力と理解を呼び掛けている。
国立大学協会によると、国立大学は学生の納付金や付属病院の収入など自己収入のほか、国の運営費交付金、企業や地方自治体などからの受託研究費などで運営されている。しかし、最も大きな比重を占める運営費交付金は2024年度、20年前の支給額の13%に当たる1,631億円も減少したほか、社会保険料や人件費負担の増加などが経営を圧迫している。
このため、任期付き教員、研究者の増加など経費削減に力を入れてきたが、研究力の低下を避けるために改善が求められている。そこへ昨今の物価高騰、円安が追い打ちをかけた格好で、声明の中で「もう限界」と訴えた。
なお、こうした背景により授業料値上げに関する報道が相次いだ東京大学は、藤井輝夫総長がホームページ上に「検討しているのは事実だが、決定していない」とする声明を発表した。声明は「授業料に対するさまざまな報道がなされているが、既に決定されたかのような不正確な情報もある」として大学側の見解をあらためて示した。
東京大学は国立大学法人化以降、20年間据え置いてきた授業料の改定も検討している。ただ、その場合は経済的な困難を抱える学生への配慮が欠かせず、授業料免除の拡充や奨学金制度の充実も同時に実施することを検討中としている。検討案は学生との対話の中で提示し、学内外の意見に耳を傾けてどうするべきか、慎重に見極める考えも示した。
参考:【国立大学協会】「国立大学協会声明-我が国の輝ける未来のためにー」の発表について
【東京大学】授業料の値上げに関する報道について