早稲田大学の伊藤悦朗教授と金沢医科大学の笹川寿之教授らは、子宮頸がんの前段階の患者の尿から、最大の病因となるヒトパピローマウイルス(HPV)のタンパク質検出に成功した。
日本では年間に約1.1万人が子宮頸がんに罹患し、約2,900人が亡くなっている。子宮頸がんは検診とワクチンで予防できる一方で、若い女性にとって検診はハードルが高いため、そのハードルを下げて検診受診率を向上させることが切に望まれている。
本研究グループはこれまでに、極微量の標的タンパク質を検出・定量するための超高感度タンパク質測定法(TN-cyclonTM)を開発してきた。これは、従来のタンパク質定量法であるサンドイッチELISA法で得られるシグナルに酵素サイクリング法を組み合わせて増幅する手法で、超高感度測定を実現している。
今回、この手法に磨きをかけた上で、子宮頸がんに移行する前の前がん状態の患者(45名)尿から、高リスク型のHPV16型タンパク質の検出を試みた。
その結果、HPV16陽性で前がん状態CIN(子宮頸部上皮内腫瘍)のうち初期のCIN1患者の尿検体では80%、CIN2患者の尿検体では71%、CIN3患者の尿検体では38%で、感染後がん化するリスクの高いHPV16型のE7タンパク質を確認した。CINが上がる(前がん状態ががん状態に近くなる)につれてE7タンパク質の発見率が減るメカニズムについては、今後明らかにすべき研究課題であるが、本成果により、非侵襲的に尿を用いて子宮頸がんの前がん段階での診断が受けられる可能性が示されたとしている。
将来的には、自身で採取した尿を医療機関や検査センターに送付すれば、子宮頸がんの初期検診ができる道が拓かれたと言える。この成果は、子宮頸がん撲滅の糸口となると期待される。