東京大学、かずさDNA研究所、千葉大学らの研究グループは、新生児が出生後に初めて排泄する初回胎便のタンパク質解析に成功した。
本研究では、早産児を含む新生児の胎便に最先端技術を駆使したプロテオーム解析を実施することで、初回胎便中に少なくとも5,370種類のヒト由来タンパク質が含まれていることを世界で初めて確認した。また、これらは、食道、胃、肝臓、膵臓、そして小腸や大腸などの消化管だけでなく、脳、心臓、肺など全身のあらゆる臓器や組織を由来とする、多数の生物学的機能を持ったタンパク質の集合体であることもわかったという。
性別、在胎週数、疾患、母体要因によるプロテオーム解析も行った。胎便中のタンパク質組成は、男女、先天性疾患(消化管疾患、先天性心疾患、染色体異常、先天感染)の有無、母体の状態(妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群)により、明らかな差異を認めた。在胎週数の違いでは、特定のタンパク質の変動を確認した。特に早産児の胎便には、ラミニン、インテグリン、コラーゲンなどの細胞外マトリックス成分が多く含まれることを確認した。
さらに、胎便中のタンパク質組成の違いに着目することで、胎便タンパク質から在胎週数を予測する機械学習モデルを構築した。このモデルの解析から、先天性の消化管疾患や心疾患のある新生児では、在胎週数が実際よりも短く予測されることがわかり、消化管の未熟性や心機能低下による血流分布異常の関与が考えられるとしている。
以上から、新生児に負担をかけず採取可能な胎便を用いて在胎週数を予測できる可能性が見出されたほか、新生児の消化管の状態を評価するための新しい方法となることも考えられる。本研究が明らかにした知見は、新生児の消化管生理学の解明だけでなく、先天性の消化管疾患や心疾患、染色体異常、先天感染などの全身性疾患の病態生理学の解明にも役立つことが期待される。