名古屋市立大学、第一薬科大学、千葉大学、亀田総合病院の共同研究により、漢方薬を使用したときに高い頻度で発症する副作用「偽アルドステロン症」の原因物質が、生薬カンゾウに含まれるグリチルリチン酸の代謝産物18β-グリチルレチニル-3-O-硫酸である可能性が高いことが明らかとなった。
漢方薬の利用拡大とともに、副作用の発症も問題となってきている。特に偽アルドステロン症は、発見が遅れると重篤な状態に至ることがある一方、発症には個人差があり、予測が困難だ。
これまで、偽アルドステロン症の原因物質は、医療用漢方エキス製剤の約7割に配合されているカンゾウの成分、グリチルリチン酸(GL)の代謝物であるグリチルレチン酸(GA)であると考えられてきた。ところが、GAはほぼすべてのヒトで血液中に検出され、偽アルドステロン症発症の個体差を説明するものではない。
その後の研究で、胆汁排泄に関わるMrp2というタンパク質の機能が低下したときにのみ血中、尿中に現れるGLの代謝物があり、それらが偽アルドステロン症の真の原因物質である可能性が示唆された。そこで本研究では、Mrp2機能不全のラットを用いてそれらの代謝物を同定し、そのうち実際に偽アルドステロン症を発症した患者の血清から高濃度で検出された18β-グリチルレチニル-3-O-硫酸が偽アルドステロン症の原因物質である可能性が高いと結論づけた。Mrp2機能が低下すると18β-グリチルレチニル-3-O-硫酸が胆汁中へ移行できずに尿中へ排泄され、腎尿細管に存在する11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2を阻害することで、偽アルドステロン症が発症すると考えられるという。
本成果により、18β-グリチルレチニル-3-O-硫酸が漢方薬の副作用予防のバイオマーカーとして有用である可能性が示されたといえる。