名古屋大学大学院工学研究科の研究グループは、九州大学先導物質科学研究所、大阪大学産業科学研究所との共同研究で、微生物を簡単に破砕し、微生物の種類を特定する技術を開発した。
微生物の種類を特定するには、微生物内部のDNAを調べる必要がある。しかし、微生物は細胞壁を持っているために、動物細胞に比べて外部からの刺激に対する抵抗力が大きいことが知られており、効率的かつ簡単に微生物を破砕する技術が求められてきた。
本研究では、ナノワイヤ(数10-100ナノメートルの棒)を用いた微生物破砕法を新たに開発した。この技術は、微生物が分散した溶液をポンプで流すという簡単な操作のみで、ナノワイヤが微生物に絡みつき、効率的に微生物を破砕してDNAを抽出することができるというもの。研究グループは本技術により、大腸菌や枯草菌だけでなく、これらと比べて破砕が困難とされる酵母も同様に簡単に破砕することに成功した。
さらに、ナノワイヤで破砕した微生物内部のDNA増幅が可能なデバイスと組み合わせることで、目視による色の変化で微生物を特定できる技術も開発した。これにより、例えば、微生物が含まれる溶液を採取し、検査薬を混ぜた後にポンプにセットしてスイッチを入れるだけで、O-157のような菌の有無を家庭でも検査可能になると考えられる。
今後、本技術を活用することによって、危険な微生物の水際での簡易検出が可能となり、微生物由来の感染症の予防にも繋がることが期待される。
論文情報:【ACS Nano】Engineering Nanowire-Mediated Cell Lysis for Microbial Cell Identification