大阪大学の家裕隆教授は、諏訪東京理科大学、石原産業株式会社、デザインソーラー株式会社らの研究者と共同で、農作物の生育に必要な青色光と赤色光を透過し、光合成への寄与が少ない緑色光を発電に用いる緑色光波長選択型有機太陽電池(OSC)の高性能化に成功した。
太陽光を発電と農作物栽培の両方に利用する技術として、シリコン太陽電池を用いたソーラーシェアリングがある。これは、作物を育てている農地にシリコン太陽電池のソーラーパネルを設置して発電する取り組み。しかし、ソーラーパネルは重量が大きく、設置用の架台設備等のスペースが必要な上、太陽光パネル自体が日陰を作るため周辺農作物への悪影響も懸念されている。
有機太陽電池(OSC)はシリコン太陽電池より軽量・柔軟で、農業用ハウスへの搭載が比較的容易な太陽電池だ。高い発電効率を目指した通常のOSCでは、幅広い可視光領域の光吸収が不可欠で、異なる大きさのエネルギーギャップをもつドナー材料とアクセプター材料を組み合わせることが多い。
今回の研究では緑色波長選択的な吸収を示す安価なドナー材料のポリ(3-ヘキシルチオフェン)と緑色光波長選択的なアクセプター材料を組み合わせて緑色光波長選択型OSCの高性能化を実現した。さらに、イチゴを用いた光合成速度評価やトマトを使った予備的な農業評価で、緑色光波長選択型OSCの農業用途が期待できる結果が得られた。
青色と赤色光を農業、緑色光と近赤外光を発電に用いる「ソーラーマッチング」に基づく波長選択型OSCにより、農作物生育に悪影響を与えずに農業用ハウスに電力を供給できる、エネルギー地産地消の新しい営農型太陽光発電技術の確立が期待される。