畿央大学大学院 客員研究員の中北智士氏らの研究グループは、地域在住高齢者を対象にした調査を行い、同一自治体内でも地区によってフレイル高齢者の運動系社会参加には格差があり、参加推進には近所づきあいなどの地域のつながりが重要であることを明らかにした。
フレイルは健康から障害に至る前段階の状態で、転倒や骨折、要介護、死亡リスクを高める。対策として運動を主体とする社会参加(運動系社会参加)がリスクを軽減するとされる。しかし、フレイルであるためにかえって十分に運動系社会参加ができていない可能性がある。また、フレイル対策には同一自治体内での運動系社会参加の地域内格差の実態把握も必要だが、調査報告は少ない。
そこで研究グループは、A市在住の要介護認定を受けていない65~80歳の高齢者を対象に、2022年に郵送調査を行い、6,532名のフレイル高齢者の運動系社会参加に関する地域要因を検討した。
その結果、運動系社会参加の割合は同一自治体内でも最大1.5倍の地域内格差があることが分かった。さらに、運動系社会参加者に占めるフレイル高齢者の割合でも、最小地区の6.7%から最大地区の16.5%と地域内格差を認めた。
また、フレイル高齢者の運動系社会参加が最多の地区では、他の地区とは異なり運動系社会参加の促進要因としてフレイルであること、近所づきあいが良好であることが認められ、参加しやすい地域では近所づきあいなどの地域のつながりの重要性が示唆された。
今回の研究はフレイル高齢者の運動系社会参加に関する要因を調査した数少ない研究の一つ。通いの場による介護予防推進には、フレイル高齢者が地域とのつながりを保てる地域密着型の取り組みが重要と指摘している。