京都大学とフランス・リール大学の共同研究グループは、マイクロプラスチックがマツバガイの捕食者を検知する能力を著しく低下させることを明らかにした。
海洋に流出するプラスチックごみは世界的に増大しており、海洋生態系への影響が危惧されている。目に見えるプラスチックごみだけではなく、プラスチックごみが波や紫外線等の影響によって小さくなったマイクロプラスチックもその一つである。
海産巻貝類マツバガイは、外套触角と呼ばれる触角状の突起を通して捕食者である肉食性巻貝類が使う酸を検知し、防御行動を取る能力を持つ。今回、本研究グループは、マイクロプラスチックがマツバガイの捕食者を検知する能力に与える影響を調べた。
ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)と、生分解性プラスチックであるポリ乳酸(PLA)の4種を用意し、これらのマイクロプラスチック浸出液を作成した。そして、マイクロプラスチック浸出液の中にマツバガイと、捕食者のイボニシとシマレイシダマシを入れ、マツバガイが防御行動を示すかどうかを観察した。
その結果、自然海水中ではマツバガイの外套触角が活発に動き、イボニシに対して70%以上、シマレイシダマシに対して25%以上防御反応を行ったのに対し、PP、PE、PA浸出液内ではマツバガイの外套触角がほとんど動かず、捕食者に対して全く防御行動を取らなくなった。このことから、マイクロプラスチックはマツバガイの捕食者の検知能力を著しく阻害すると考えられる。
一方、PLA浸出液内ではマツバガイはイボニシに対して40%、シマレイシダマシに対して10%の個体が防御反応を示し、生分解性プラスチックは捕食者検知能力への影響が少し小さいことがわかったとしている。
本研究により、マイクロプラスチックが捕食―被食の関係に劇的な影響を与え、海洋生態系の食物連鎖を崩壊させる恐れがあることがわかった。海洋へのプラスチック流出に警鐘を鳴らす成果である。