アニコム先進医療研究所株式会社、国立遺伝学研究所、公益財団法人かずさDNA研究所、香港中文大学、宮崎大学、麻布大学の共同研究グループは、イエネコのすべての遺伝情報(以下、ゲノム)を正確に解読することに成功し、これまで見つかっていなかった新たな遺伝子を1,600個以上発見した。

 国際基準ゲノム配列(以下、参照配列)は、生物学研究を進める上でなくてはならない基盤情報である。しかし、ヒトやマウスなど一部を除く多くの動物で、未だ参照配列は未整備あるいは不完全である。

 イエネコに関しても、2007年に最初の参照配列が公開されたが、まだ配列解読時のエラーが存在することや、未解読の配列が存在することが課題である。また、イエネコは数多くの品種が存在し、遺伝的に多様である一方で、現在の参照配列はアビシニアン種のネコ由来のDNAがベースとなっている。そこで今回、本研究グループは、世界的にも人気があり、かつ近縁な品種が多いという特徴をもつアメリカン・ショートヘアーで高精度ゲノム解読および参照配列の樹立を目指した。

 先進的なゲノム配列解読技術を活用して新しい参照配列を開発し、アニコムの名を冠してAnicom American Shorthair 1.0(AnAms1.0)と名付けた。AnAms1.0を6つのネコ科動物の既存の参照配列と比較した結果、参照配列の品質の良さを示す指標がいずれも最も良く、最も正確に遺伝子が再構成されている参照配列であることがわかった。

 さらに、遺伝子情報を詳細に解析した結果、染色体上に存在する遺伝子のうち、これまで見つかっていなかった1,685個の遺伝子を新たに検出した。

 この成果は、より多くのネコ種でのより正確な遺伝研究の基盤となるだけでなく、未知の遺伝病解明やネコの個別化医療といった獣医療の発展にも貢献することが期待される。

論文情報:【Journal of Advanced Research】Chromosome-scale assembly with improved annotation provides insights into breed-wide genomic structure and diversity in domestic cats

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