東京科学大学の研究グループは、発達期の鼻呼吸障害が小脳の発達と機能に重大な影響を与え、運動機能低下や抑うつ様行動を引き起こすことをマウスで明らかにした。

 アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、アデノイド肥大など、さまざまな要因によって引き起こされる鼻呼吸障害は、睡眠の質低下や顎顔面の成長への影響などにとどまらず、近年、脳の発達と機能にも影響を及ぼすことが示唆されている。

 そこで、本研究グループは、発達期における鼻呼吸障害が脳の発達にどのように影響するのか、特に運動制御や認知機能、感情の調節に関与するとされる小脳に着目して調べた。

 発達段階に片側の鼻を閉じた鼻呼吸障害のモデルマウスを作成して観察した結果、鼻呼吸障害マウスでは運動能力の低下や抑うつ様行動の増加が認められた。とりわけ、生後3日目から3週間目に鼻呼吸障害があると抑うつ様行動に影響を与えやすく、生後3週間目から7週間目に鼻呼吸障害があると運動機能に影響を与えやすいことがわかった。

 また、この機序として、鼻呼吸障害マウスでは、小脳の不要なシナプス除去の過程の障害により、神経回路の形成が阻害されていることを発見した。さらに、小脳の神経細胞集団の活動が異常に同期しており、これらの脳発達障害が成体になっても持続することが確認された。

 以上から、鼻呼吸は脳の正常な発達と機能維持に不可欠であることが明らかとなった。この成果は、鼻呼吸障害が単なる呼吸の問題を超えることを示し、小児期の鼻呼吸障害に対する早期診断と治療の重要性を再認識させるものである。鼻呼吸障害が脳の発達に与える影響のメカニズムも明らかとしたため、将来の治療や介入の新たなアプローチの開発につながる可能性も期待される。

論文情報:【Communications biology】Nasal obstruction during development leads to defective synapse elimination, hypersynchrony, and impaired cerebellar function

東京科学大学

大学ジャーナルオンライン編集部

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