新潟大学、大垣女子短期大学、鹿児島大学は、日本で初めて小児期の“お口ぽかん”(専門用語で口唇閉鎖不全)の有病率に関する全国大規模疫学調査を行い、その結果を報告した。
これまでの研究で、お口ぽかんは、口唇や顔の表情筋の弛緩と過緊張、口呼吸、不自然な口唇の長さや鼻から下の顎の大きさの増加などと関連していることがわかっている。また、口唇を閉じる力(口唇閉鎖力)が弱くなると、上の前歯が前方に傾いて突き出たり、上の左右の奥歯の幅が狭くなったりすることから、お口ぽかんと悪い歯並びには密接な関連があるとされる。
しかし、日本における子どものお口ぽかんの有病率を評価する全国的な大規模調査は過去に行われたことがなく、お口ぽかんの有病率が年齢や地域によって異なるかどうかや、どのような要因がお口ぽかんに関連しているかの検証は十分ではなかった。
そこで本グループは、全国小児歯科開業医会の協力を得て、全国66の小児歯科を定期的に受診している3歳から12歳までの3,399人の子どもを対象に、大規模疫学研究を実施した。その結果、日本の子どもたちの30,7%が日常的なお口ぽかんを示しているとともに、お口ぽかんの有病率は年齢とともに増加していることがわかった。また、お口ぽかんの有病率に地域差は認められなかった。
お口ぽかんと関連の深い要因については、「唇にしまりがない」、「鼻がつまる」、「音を立てて食べる」など12の項目が抽出された。これらには、顎顔面の形態や位置だけでなく、口呼吸やアレルギー性鼻炎なども関連している可能性がある。
本研究結果から、子どものお口ぽかんは、自然治癒が難しい疾病であることが示唆された。本成果を足掛かりに、今後はさらなるお口ぽかんの病態解析や改善法の確立といった研究が進むことが期待される。