全国の河川などで回収されるプラスチックごみの量が年間約1,000トンに上ることが、東京理科大学創域理工学部の田中衛助教らの調査で分かった。行政や市民の河川清掃活動でのごみ回収データを整理した調査で、国内のプラスチックごみ回収量を定量的に評価したのは初めて。

 東京理科大学によると、研究グループは国土交通省から全国109の1級河川水系で2016年度から2020年度までのごみ回収量に関するデータ提供を受け、解析した。国交省データがプラスチックごみの回収量を紙ごみと合算していたため、千葉県を流れる大堀川の清掃活動に参加して回収したごみからプラスチックごみの量を算出する換算式を考案、全国データに当てはめて推計した。

 その結果、全国のプラスチックごみ回収量は対象の5年間、763~1,177トンで推移し、年平均938トンであることが分かった。このうち、約5割を関西の淀川水系、四国の吉野川水系、関東の利根川水系など7水系が占めていた。

 プラスチック回収率と人口や清掃参加者には中程度の相関がみられ、特に、淀川流域と利根川流域では、回収に携わる市民が多く、プラスチック回収量も多いことが示された。これは、それぞれの水系の人口が約1,100万人、1,300万人と非常に多いことから、プラスチックごみ発生量、そして回収に携わる市民いずれも多かったためだと考えられる。

 また、水系ごとの回収量は、台風や大雨などの極端な気象現象の影響を受けることも示唆された。例えば、2018年西日本豪雨で特に被害が大きかった地域を流れる太田川水系と木曽川水系では、2018年度にプラスチックごみ回収量が顕著に多かった。また、阿武隈川水系は2019年度に回収量が多く、2019年台⾵19号による水害の影響だと推測される。

 自然環境中に放出されたプラスチックごみは風化で微細化してマイクロプラスチックになる。マイクロプラスチックは回収がほぼ不可能なうえ、分解に非常に長い年月が必要で、世界的な環境問題に浮上している。そのため、プラスチックごみの削減に加え、プラスチックごみが微細化する前に回収することが重要となるが、これまで国内レベルの回収量を評価した事例がなかった。

 今回の研究から、日本全国のプラスチック年間回収量は、これまでに推定された陸上プラスチックの年間排出量よりもはるかに少ないことが分かった。研究グループは、マイクロプラスチック問題を解決するためには、プラスチックごみ排出量そのものを減らすこと、そして、ごみ回収を継続して行うことの重要性を改めて示す結果になったとしている。

論文情報:【Marine Pollution Bulletin】Country-wide assessment of plastic removal rates on riverbanks and water surfaces

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