名城大学の香村恵介准教授を代表とする研究チームは、短時間で簡単に実施できる幼児向けの運動能力評価ツール「SMC-Kids」を開発した。
幼児期の運動能力は、身体の健康のみならず、認知能力や学習能力にも影響することが知られており、定期的にモニタリングすべき重要な指標となる。しかし、従来の幼児の運動能力評価ツールは、専門的な知識や技術、特別な用具、広いスペースを必要とし、保育現場で手軽に実施することは困難だった。
そこで本研究チームは、特別な用具や広いスペースがなくても3~6歳の幼児の運動能力を簡便に測定できる「Simple Motor Competence-check for Kids(SMC-Kids)」を開発した。SMC-Kidsは、10m先に置かれた2つの紙ボールを1つずつ運びながら往復して合計40mを走る「10m折り返し走」と、A4用紙5枚を布ガムテープで巻いて作った紙ボールの遠投距離を計測する「紙ボール投げ」の2項目で構成される。必要なものはA4用紙や布ガムテープ、巻尺、ストップウォッチだけであり、バドミントンコートよりも少し広いスペースがあれば、屋内で安全に実施できる手軽さが特徴だ。
既存の代表的な運動能力評価ツールである「Test of Gross Motor Development-3(TGMD-3)」との比較によりSMC-Kidsの妥当性を検証した結果、移動能力や操作能力において中程度から高い相関を認め、SMC-Kidsが幼児の運動発達を適切に評価できるツールであることが確認された。また、信頼性の検証では、異なる評価者間、および同一評価者による繰り返しの測定で非常に高い再現性が確認され、安定した測定結果を得られる信頼性の高いツールであることも示された。
SMC-Kidsは、保育現場での活用はもちろん、家庭や地域イベントでの活用も見込まれ、保護者や保育者が幼児の運動発達を簡便に把握する有用なツールとなることが期待される。