海洋研究開発機構の渡邉英嗣主任研究員は、北海道大学大学院水産科学研究院の上野洋路教授、東京海洋大学海洋科学部の溝端浩平准教授らとの共同研究で、北極海の太平洋側に位置するチュクチボーダーランド海域で海氷の下にある海洋亜表層にベーリング海峡から太平洋の暖かい水が流れ込み、蓄熱が進行していることを突き止めた。

 海洋研究開発機構によると、渡邉主任研究員らは海洋研究開発機構の海洋地球研究船「みらい」の約20年にわたる長期航海データを解析し、チュクチボーダーランド海域の海洋亜表層に貯まった熱量が1999年から2000年にかけて約1.8倍に増加していることを見つけた。

 さらに、ベーリング海峡から北極海に流入する水塊の上流側に位置するバロー峡谷で採取したデータや人工衛星データから推計した海洋循環変動の解析結果を組み合わせた結果、ベーリング海峡から侵入する水塊の温度上昇とチュクチボーダーランド海域へ向かう海流の強まりで貯熱量増加が進行していることも分かった。

 北極海の海氷面積は2012年に観測史上最少を記録したあと、最小面積の更新がないものの、長期的に見ると減少傾向が続いている。海洋亜表層に貯まった熱が海面に伝われば、海氷の融解を促すとともに、結氷を抑制して海氷激減のきっかけになると考えられている。

 渡邉主任研究員らはこれらの予兆をとらえるために、チュクチボーダーランド海域での海洋観測を継続することが重要とみている。

論文情報:【Scientific Reports】Subsurface warming associated with Pacific Summer Water transport toward the Chukchi Borderland in the Arctic Ocean

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