畿央大学大学院博士後期課程の浦上英之氏と岡田洋平准教授らは、顕著な前屈姿勢を示すパーキンソン病患者が、歩行中の垂直方向の不安定性が高く転倒リスクが高いこと、また重心位置を後方に位置させ、側方への重心移動を増加させながら歩く代償戦略をとっていることを明らかにした。
パーキンソン病の患者は、顕著な前屈姿勢(Camptocormia)を示すことがあるが、そのような前屈姿勢が歩行不安定性に与える影響や、それをどのように代償しているのかは、客観的に解明されていなかった。
本研究では、Camptocormiaを示すパーキンソン病患者に実験に参加してもらい、三次元動作解析装置を用いて歩行不安定性の検証を行った。その結果、Camptocormiaがあるパーキンソン病患者は、Camptocormiaがないパーキンソン病患者よりも垂直方向の歩行不安定性が高いことが示された。また、歩行の特徴として、歩行中の重心位置を後方に位置させ、矢状面上の下肢関節運動範囲が減少し、側方への重心移動、骨盤側方傾斜の運動範囲、歩隔を増加させていることがわかった。
一方、Camptocormiaがあるパーキンソン病患者の中でも顕著な前方への歩行不安定性を示した1名は、後方重心や矢状面上の関節運動減少、歩隔の拡大を認めず、頻回な前方への転倒歴を認めた。
以上から、Camptocormiaを示すパーキンソン病患者は垂直方向の歩行不安定性による転倒リスクが高く、代償戦略として前方への歩行不安定性が生じないように後方重心姿勢をとり、矢状面上での関節運動を減少させ、側方の関節運動を増加させることで、体幹屈曲の慣性モーメントを減少させていることが考えられるとしている。
本研究成果は、前屈姿勢を示すパーキンソン病患者の歩行安定性を最適化するためのリハビリテーションを検討する上で有益な知見となることが期待される。