行為主体感とは、自身の行為を制御している感覚のことをいい、行為の予測と結果の誤差が小さいとき、「この行為は自分で起こしたものである」と感じ、行為主体感を経験することができる。

 畿央大学大学院博士後期課程の林田一輝氏と森岡周教授は、先行研究で、知覚運動能力が高いと行為主体感が増幅することを報告した。しかし、どのような要素が行為主体感に影響したのかは不明だったため、今回、暗黙的なルールを含む知覚運動課題と、行為主体感を定量的に測定するintentional binding課題を同時に実行することで、運動課題中のルールへの気づき経験が行為主体感に与える影響を調査した。

 実験に参加した29名の健常人に、水平方向に反復運動するオブジェクトをキー押しによって画面の中央で止める知覚運動課題に取り組んでもらった。オブジェクトの移動速度は5段階あり、速度1から速度5まで1秒ごとに切り替わりループする暗黙のルールを設定した。実験終了後、ルールに気づいたかどうかを聴取し、参加者を「気づきあり群」と「気づき無し群」に分けて比較した。
あわせて、キー押しから数100ms遅延して音が鳴るように設定し、キーを押してから音が聞こえるまでの時間間隔を参加者に推定してもらった。この時間間隔を短く感じるほど、行為主体感が増幅しているとみなすことができる(intentional binding効果)。

 本実験を10ブロック(計180試行)にわたり実施し、実験の初期、中期、後期において運動課題とintentional binding効果の時系列的な変化を調べた。その結果、気づき無し群と比較して気づきあり群では、intentional binding効果が徐々に増幅していた。つまり、ルール(法則性)への気づきが行為主体感を増幅させることが示唆された。

 気づきが行為主体感に影響を及ぼす可能性を示した本成果は、行為主体感の変容プロセス解明の一助となることが期待される。

論文情報:【Brain Sciences】Intentional Binding Effects in the Experience of Noticing the Regularity of a Perceptual-Motor Task

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大学ジャーナルオンライン編集部

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