脳卒中後、多くの人が日常生活の質に大きな影響を与える「歩行非対称性」を経験する。畿央大学の水田直道客員研究員らの研究グループは、この歩行非対称性の原因が「純粋な障害」と「代償戦略」の2つに分類できることを明らかにした。
脳卒中者の歩行の特徴として、歩行時の左右の動きが異なる「歩行非対称性(TGA)」がある。この状態は転倒リスクを高め、日常生活の質の低下やリハビリ期間の延長にもつながる。TGAは運動麻痺や痙縮などの身体的な要因だけでなく、患者が安全を優先して取る歩行戦略も影響していると考えられていた。しかし、これらの要因をどのように区別できるかは不明だった。
研究グループは脳卒中後の患者39名を対象にリズム聴覚刺激を用いた歩行実験を行い、身体機能や歩行の自己効力感(編注:歩行に対する自信)を評価。分析の結果、4つの特徴的なグループに分類することができた。そして、歩行非対称性の原因が「純粋な障害」と「代償戦略」の2つに分類できることを明らかにした。
まず、「純粋な障害」を特徴とするグループは、運動麻痺や痙縮、体幹機能が重症で、そのような神経学的要因により歩行が非対称的であった。また、「代償戦略」を特徴とするグループは、身体機能は他のグループと差がないが、歩行への自己効力感が低かった。
研究により快適歩行時のTGAの要因を「純粋な障害」と「代償戦略」に分類できたことで、個々の脳卒中者に応じた効果的なリハビリテーションの立案に役立つと期待される。今後は、個々の特徴に合わせたリハビリテーション介入の効果を検証する予定としている。