ソニーグループと英科学誌とNatureは、科学、エンジニアリング、数学を含むテクノロジー分野において、より良い地球と社会を築く画期的な研究をリードするキャリア初期から中期の女性研究者を表彰する第1回「Sony Women in Technology Award with Nature」の初代受賞者に人工知能とセンサーでがん発見に取り組む米カリフォルニア大学サンディエゴ校のキアナ・アラン准教授ら3人を選んだ。
受賞者は Kiana Aran氏(アメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校)、Amanda Randles氏(アメリカ・デューク大学)、Yating Wan氏(サウジアラビア・アブドラ国王科学技術大学)、および審査員特別賞のJiawen Li氏(オーストラリア・アデレード大学)の3名。研究活動を推進するための賞金 250,000 USドルが3名の受賞者それぞれに授与される。
Mid-Career部門で受賞したバイオエンジニアリング・薬学教授のKiana Aran氏は遺伝子疾患や新型コロナウイルス感染症など呼吸器感染症の早期発見に寄与する電子チップ開発など、生物学と工学の融合で医療を向上させる先進的研究が高く評価された。また、複数の団体を通じて、テクノロジー分野やリーダーシップにおける女性の役割を高めるために積極的に活動。女性エンジニアの指導を行う非営利団体を設立して国際的な科学協力を積極的に推進しており、女性の存在が極めて少ない半導体分野において、ロールモデルとなることをめざすAran氏の熱意も受賞理由となっている。
同じくMid-Career部門で受賞したコンピューター科学者であり医用生体工学の研究者、Amanda Randles氏は、複数の計算モデルを融合して各患者固有の心臓血管動態に関する分析結果を公表、治療戦略を最適化する革新的なデジタルツイン研究が注目を集めた。審査委員会は「臓器のデジタルツインを医師が検証することでより能動的な介入を可能にするというビジョンは大きなインスピレーションを人々に与える」と評価した。
Early-Career部門受賞者のYating Wan氏は、量子ドットレーザーとシリコンフォトニクスを統合する斬新な手法で知られ、シリコンチップ上への光源統合でよりエネルギー効率の高いデータ通信と情報処理実現を目指している点が評価された。審査委員会は、Wan氏がこの分野における新進気鋭の研究者として「データ通信の未来に大きく貢献し、シリコンフォトニクスセンサーの未来に革命的な変化をもたらす可能性がある」と強調している。
審査員特別賞を受賞したバイオメディカル工学者のJiawen Li氏は、ナノスケールの3Dプリントと光ファイバー技術を組み合わせ、髪の毛ほどの細さの内視鏡を開発。臨床導入する重要なステップとして、この発明の商品化に積極的に取り組んでいる。また、共同研究者とともにマルチモーダル技術の機能の拡張にも取り組んでおり、神経疾患や体外受精といった他領域への応用も模索している。
Nature編集長、マグダレーナ・スキッパーは「テクノロジー業界の職位において女性が占める割合は、世界全体で3分の1にも満ちません。しかし依然として、世界が直面している最も差し迫った課題に対処するには、研究とテクノロジーの分野に女性がもたらす多様性、創造性、イノベーションが必要不可欠です。卓越した研究とイノベーションへのコミットメントを体現する今年の受賞者の方々は、研究およびエンジニアリング分野でのキャリアをめざそうとしている次世代の女性たちにとって最高のロールモデルです」とコメントしている。
次回の「Sony Women in Technology Award with Nature」は2025年3月6日から応募受付を開始する。詳しい応募資格については、同賞公式Webサイトに掲載している。