金沢大学理工学域の3学類一括1年生たちと、災害被災地への継続的な学生ボランティア派遣のための活動を行っている学生サークル「金沢大学ボランティアさぽーとステーション(ボラさぽ)」、同サークル顧問の原田魁成講師は、株式会社システムサポートと共同で、災害ボランティア活動のノウハウを提供するAIエージェントを開発した。金沢大学によると、災害ボランティア活動の支援を目的とした類似ツールはほとんどなく、新しいニーズに応える革新的なサービスとして期待されている。

 このAIエージェントは災害ボランティア活動に必要なノウハウを学ぶ機能を備え、安全対策や現場での効果的なコミュニケーション方法、必要となる準備物などを初心者にも分かりやすく解説する。

 さらに、内閣府などの公的支援情報を提供するほか、若者に人気の16性格診断を基にして外交的な人には現場での調整役、内向的な人には事務サポートや分析業務などユーザーの性格に合わせた行動を提案する。プラットフォームにはLINEを使用、誰でも簡単に質問することができる。

  実証実験では利用者の85%が「他の人にも勧めたい」と高く評価しており、現在は「ボラさぽ」の活動参加者を対象に試験運用中。今後の準備状況を踏まえて一般公開の時期を検討しており、一般公開の際はLINEの友だち登録を通じて広く利用できるようにする。

 金沢大学がある石川県は2024年1月の能登半島地震、同年6月の豪雨災害で甚大な被害を受けた。こうした大災害時に復旧や復興を支えるのが災害ボランティアだが、参加者数は十分でない。2022年に実施された内閣府の全国調査では、4割以上がボランティア活動に参加しない理由として「ボランティア活動に関する情報が不十分」を挙げている。

 そこで金沢大学の研究者から成る医療系人工知能研究グループは、ボラさぽとともに、異分野融合(医療・経済・AI)共同研究開発チーム「デジさぽ」を結成。災害ボランティア活動に関する正確かつ実践的な情報提供を行うAIエージェントの開発に至った。

 金沢大学の研究グループは今後、このAIエージェントを活用してボランティア活動への参加者を増やし、将来発生が懸念される地震への備えとして、他地域のボランティア活動にも応用できるデジタルインフラへと発展させる計画。

参考:【金沢大学】災害ボランティア活動を支援するための AI エージェントを開発(PDF)

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