広島工業大学環境学部食健康科学科の角川幸治教授、広島大学大学院統合生命科学研究科の水沼正樹教授と荒川賢治教授、お多福醸造株式会社は、線虫を用いた研究で、ドライフルーツの一種であるナツメヤシ属の果実「デーツ」に平均寿命の延長効果を発見した。
研究グループによると、デーツはアラブ文化圏では主食の一つとして親しまれており、古くから「神が与えた果実」や「生命の樹」として崇められてきた。旧約聖書にも登場するなど、歴史的にも重要な果実として知られる。
研究グループは、食品の持つ抗老化作用に注目し、日常的に摂取されることの多いドライフルーツ(デーツ、パイナップル、イチジク、マンゴー、プルーン)の寿命延長効果を検証した。実験には、線虫(Caenorhabditis elegans)を用いた。線虫は、哺乳類を含む高等動物と共通する老化関連のシグナル伝達経路を数多く有しており、抗老化研究のモデル生物として適している。
5種類のドライフルーツをそれぞれ線虫に摂取させ、寿命測定を行った結果、すべてのドライフルーツにおいて線虫の平均寿命(Mean Lifespan:MLS)を有意に延長する効果を認めた。中でもデーツにおいては、最大寿命には大きな影響がないにもかかわらず、平均寿命のみが著しく延びる(延長率:37.1%)という特異な結果が得られた。最大寿命と平均寿命を標準化した際の最大寿命と平均寿命の差(ΔZ比)についても、デーツは他のドライフルーツと比べて平均寿命の延長効果が際立っていることがわかった。
デーツの品種による違いも検証した。市販されている8種類のデーツを用いて同様の実験を行ったところ、いずれの品種でも平均寿命の延長が認められたという。すなわち、デーツ全般に共通して平均寿命延長効果があると考えられる。
一方、成分分析の結果、これまで寿命延長作用が報告されている既知の成分は、調査対象となったデーツには含まれていない、または影響していないことが判明した。これまでに知られていない新たな「平均寿命延長成分」がデーツに含まれている可能性が示唆される。
今後は、デーツの平均寿命延長成分の特定を進め、抗老化に資する健康食品の開発を推進するとしている。