静岡理工科大学理工学部物質生命科学科の小土橋陽平講師、工藤遥子さん(同学大学院修士課程2年)、小野準矢さん(同学2016年度卒業生)の研究グループは、ポリビニルアルコール(PVA)を簡便に機能化するためのシステム開発に成功した。

 PVAは包装フィルムや化粧品など、身の回りの様々な場面で利用されている高分子であり、その生産量は世界で年間500万トンにも及ぶ。

 PVAの応用分野をさらに拡張するためには、PVAの性質を制御する「機能化」が必要だ。しかし、PVAはその構造上機能化が難しく、多段階の有機反応や紫外線処理などを要する結果、高コストになってしまうという問題があった。

 この問題解決のため、本研究グループはPVAが持つジオール基(2つのアルコール基)と可逆的に結合可能なベンゾオキサボロール基含有高分子に着目した。ベンゾオキサボロール基を含有する高分子をPVAと混合するだけで、危険な溶媒や特殊な装置を必要とせず、PVAを簡便に機能化することができる。また既存のPVA生産ラインにそのまま適用できるため、低コストにて機能性PVAを製造できることが期待される。

 本研究では実際に、PVAフィルムに温度応答性やpH応答性を付与することに成功したという。フィルム形成や機能化に、ベンゾオキサボロール基とPVAのジオール基との可逆的な共有結合が関係していることを明らかにした。本技術を拡張すれば光や磁場、音、特定分子などに応答する機能性PVAフィルムを調製可能だ。

 機能性PVAフィルムは、様々なセンサーとして応用が可能なことから、IoT社会を支える基盤技術となりえる。また、同材料は生体適合性が高いことから、医療分野への応用も期待されるとしている。

論文情報:【Polymer】Controlled water-soluble properties of poly(vinyl alcohol) films via the benzoxaborole-containing temperature-responsive copolymers

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2022年4月土木工学科を新たに開設。研究を通して専門力と人間力を身につけた技術者を育成

静岡理工科大学は、静岡県唯一の私立理工系総合大学として理学系と工学系の学科を併せ持ち、2学部7学科1専攻で編成されています。 研究室は、少人数体制での運営をモットーにしており、学生と教員の距離が近いことからコミュニケーションが取りやすく、学生一人ひとりにきめ[…]

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