理化学研究所、東京大学の研究者らは、数時間から数日かけて得る単結晶構造解析結果を、数分で計測した予備的なデータから事前評価できる技術の開発に成功した。
試料にX線を照射して数千から数万個のデータを計測し、コンピューター処理によって3次元的な構造情報を得る単結晶構造解析は、学術研究や産業研究で幅広く活用されている手法だ。
一方、解析に必要なデータの計測には数時間から数日を要する。そのため、通常は数分で行う予備計測の結果に基づき、研究の目的に相応しい解析結果が見込まれる試料の選別や計測条件の設定を行うが、この試料の選別と計測条件の設定は、いまだに研究者の「勘と経験」で行われているという。
本研究グループは、単結晶構造解析の高精度化と高効率化を目指し、熟練の研究者による「勘と経験」を統計解析に置き換えることで、適切な試料の選別と計測条件の設定を行うための技術を開発した。この開発では、統計解析技術の1つである「ベイズ推論」(結果から原因を推定する逆過程の統計解析法)を応用し、予備計測で得られるデータから結晶構造パラメーター値を推定可能にした。これにより、経験が少ない研究者でも、「勘と経験」に頼ることなく、選別した試料から得られる解析結果や、設定した計測条件で得られるデータの質の事前評価ができる。事前評価を行うことで、研究の目的に相応しい試料の選別や計測条件の設定を効率よく行えるようになる。
また、この事前評価は全てコンピューターで実行可能なものであるため、従来は人為的に行われてきた解析に必要な実験を、人に代わってコンピューターが判断し実行する自動化技術にも発展が期待されるとしている。
論文情報:【Scientific Reports】Inference-assisted intelligent crystallography based on preliminary data