イタリアと日本の国際研究チームにより、イタリア南部のカヴァロ洞窟に残された4万5000~4万年前の現生人類(ホモ・サピエンス)の遺跡から、ヨーロッパ最初の投射具の証拠が発見された。
これまで、ヨーロッパ最古の投射具の事例は、2万3000年前のフランスのコンブ=ソニエール遺跡から出土した投槍器とされてきた。ところが今回、東北大学の佐野勝宏教授が開発した分析手法により、カヴァロ洞窟から出土した現生人類の三日月形石器を分析したところ、この石器が投槍器あるいは弓を使って投射された痕跡が見つかり、ヨーロッパにおける投射具利用の起源が約2万年遡ることとなったという。
4万5000~4万年前は、ヨーロッパでネアンデルタール人と現生人類が共存していた頃。ネアンデルタール人が4万年前に絶滅した一方、現生人類は人口を増やしていたと見られるが、その理由はわかっていなかった。
今回、佐野教授らはイタリアと日本の国際研究チームを組織。カヴァロ洞窟から出土した146点の三日月形石器を、デジタルマイクロスコープを使って分析した。
その結果、多くの三日月形石器に、投槍器や弓で投射されたサンプルと似た使用痕跡が認められ、ヨーロッパに拡散してきた現生人類が投槍器や弓のような投射具を装備していたことが示唆された。
更に、幾つかの三日月形石器には、オーカー、樹脂、蜜蝋を混ぜた接着剤が付着していることが発見された。速い速度で獲物に当たった際に石器が柄から外れるのを防ぐために、このような接着剤を用いて固定強度を高めていたと考えられるという。
投槍器や弓を使った狩猟は、生存競争において有利であることがわかっており、今回の発見は、現生人類が人口増加を実現した謎の解明に寄与するものとして期待される。