理化学研究所と東京大学の共同研究グループは、日本人約19万人のゲノム解析を行い、身長に関わる573の遺伝的変異を同定した。日本人の身長の違いに関わる遺伝的・生物学的な特徴の理解に役立つものと期待される。

 身長や体重などの多因子形質(遺伝・環境の多要因による特徴)の原因の特定には、ゲノム上の遺伝的変異を網羅的にスクリーニングする方法「ゲノムワイド関連解析(GWAS)」を主に用いる。しかし、これまでに実施したGWASでは、日本人に比較的よく見られる塩基の違いのみを調べており、頻度が低い遺伝的変異については、精度が低く十分検討されなかった。また、これまでの身長に関係する遺伝的要因の大規模な検索は、対象が欧米人中心で、日本人対象の研究は小規模なものに限られていた。

 今回、共同研究グループは、これまで多因子形質のゲノム解析で評価が難しかった、日本人の頻度の低い遺伝的変異を精度良く評価できるように、遺伝統計学的手法である「全ゲノムインピュテーション(全ゲノム予測)」用の参照配列を新たに作成した。この参照配列を用いて、日本人約19万人の身長に関わる遺伝的要因をGWASにより調べた結果、573の遺伝的変異を同定し、身長に影響する二つの遺伝子も新たに特定した。

 さらに、低頻度の遺伝的変異は身長を高くさせる傾向にあることを明らかした。これは、身長を高くする遺伝的変異が日本人集団では自然淘汰を受けていたことを示唆する結果で、欧米人で検証された結果と真逆であり、高身長が日本人にとって何らかの不利な影響を及ぼしていた可能性を示している。

 今回の研究成果は、身長に関する遺伝的要因の人種差の理解や生物学的機序の解明への貢献が期待される。

論文情報:【Nature Communications】Characterizing rare and low-frequency height-associated variants in the Japanese population

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