東京医科大学、東京工業大学、イタリア・ミラノ大学の国際共同研究グループは、サリドマイドが奇形を引き起こす原因が、p63というタンパク質の分解によるものであることを明らかにした。

 胎児に催奇形性を示すサリドマイドは、1960年代の世界的な薬害事件で知られる一方、のちに一部の難治性疾患に対して優れた治療効果を示すことがわかり、現在では各国の法規に基づき厳格な処方がなされている。サリドマイド骨格をもつ医薬品の研究開発は精力的に進められているが、催奇形性のないサリドマイド系化合物はいまだ見つかっていない。

 本研究者らは2010年に、サリドマイドの主要な標的因子がセレブロンというタンパク質であることを突き止め、その後の研究で、サリドマイド系化合物がセレブロンに結合すると、セレブロンの基質特異性が変化し、通常は分解されないタンパク質が分解されるようになることを明らかにした。そして今回、こうした薬剤依存的に分解されるタンパク質のうち、p63タンパク質がサリドマイドの催奇形性に関わっていることを見出したという。

 p63には大小の2つのタイプがあり、胎児の発生過程で小さい方が手足の形成に、大きい方が耳の形成に重要な役割を果たしている。本研究者らが脊椎動物のモデル生物であるゼブラフィッシュを用いて解析したところ、サリドマイドがセレブロンに結合すると、p63タンパク質の大小両方の分解が誘導され、その結果、手足や耳の奇形が引き起こされることが明らかとなった。

 本研究によりサリドマイドの副作用の原因がp63の分解であることが判明したことから、今後、p63の分解を誘導しない安全な新薬の開発が期待される。

論文情報:【Nature Chemical Biology】p63 is a cereblon substrate involved in thalidomide teratogenicity

東京医科大学

大学ジャーナルオンライン編集部

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