奈良先端科学技術大学院大学の末次志郎教授の研究グループは、九州大学と共同で、マクロファージなどの免疫細胞が異物を取り込み消化する際にできるカップ型の構造体「ファゴサイトーシス(食作用)カップ」の形成機構の一端を明らかにした。
末次教授らは、タンパク質分子の構造の中で「BARドメイン」と呼ばれる、生体膜の形態形成を担う機能を持った部分であるタンパク質モジュールを研究してきた。BARドメインは、タンパク質が生体膜上で集まり、ブロックを積み重ねるように形を作ることで、生体膜の形態を整えるタンパク質ドメインだ。
今回、「GAS7」というタンパク質に含まれるBARドメインの解析を実施。その結果、研究グループは、このタンパク質の立体構造を決定した。さらに、GAS7がどのようにブロックのように集まりファゴサイトーシスカップにおいて機能するかについて調べたところ、細胞の比較的大きな部分を占めるファゴサイトーシスカップの形成に適した平面状の集合をすることを見出した。
また、研究グループは、この集合が、試験管内で再構成でき、同様の集合が実際のファゴサイトーシスカップに見られることを、超解像イメージングをはじめ、数理モデル解析や生化学・細胞生物学的解析により詳細に明らかにした。
これにより、ファゴサイトーシスカップの形成機構としてこれまでに知られていなかった機構が解明され、免疫応答機構のみならず生命の根源的な理解が深まる。同時に詳細な分子機構は、将来の免疫細胞などの機能操作に道を開くとしている。