島根県の宍道湖でウナギやワカサギの漁獲量が激減した時期にネオニコチノイド系殺虫剤(※1)が周辺の水田で使用され始めたことを、東京大学大学院新領域創成科学研究科の山室真澄教授と産業技術総合研究所、島根県保健環境科学研究所、名古屋市環境科学研究センター、千葉工業大学の研究グループが突き止めた。研究グループはネオニコチノイド系殺虫剤がウナギやワカサギのえさとなる生物を殺傷した可能性があるとみている。
ワカサギも以前は年間200~300トンの漁獲量があったが、1993年を境に急減し、年間50トン未満に一気に落ち込んでいる。シラウオの漁獲量については変化が見られなかった。
宍道湖では1982年に1立方メートル当たり121個体生息していた昆虫のオオユスリカ幼虫が2016年の調査で見つからず、いなくなった時期が1993年だったことが明らかになった。さらに、宍道湖の動物性プランクトンの大部分を占めるキスイヒゲナガミジンコが1993年5月に激減していたことも分かった。
ネオニコチノイド系殺虫剤は水溶性で、水田に散布されたあと、宍道湖に流入しているとみられる。シラウオは初期段階で植物プランクトンをえさにするが、ウナギやワカサギは動物だけを食べる。このため、研究グループはネオニコチノイド系殺虫剤によるえさの減少でウナギやワカサギが激減したとみている。
※1 ネオニコチノイド系殺虫剤 昆虫の神経系に作用する殺虫剤。欧米でミツバチの大量失踪を招いた原因と指摘する声も出ている
論文情報:【Science】Neonicotinoids disrupt aquatic food webs and decrease fishery yields