名古屋大学のアジ・アドハ・スクマ研究員と大野雄高教授、九州大学の吾郷浩樹教授の研究グループは、一滴の水滴から5ボルト以上の発電をする技術を開発した。流体存在下での自己給電型IoTデバイスへの応用が期待される。
現在、環境に存在する熱や振動などの微小なエネルギーからIoTセンサを駆動する電力を得る「環境発電」技術が、電池に代わる交換不要な電源として、IoT(モノのインターネット化)推進において注目されている。特に水力はクリーンエネルギーの代表で大規模な水力発電に利用されてきたが、工場の配管や微小流体デバイスなど小さな流れのエネルギーは随所に存在しても、その電力利用は未開発だ。
研究グループは今回、一滴の水滴から5ボルト以上の発電をする技術を開発。この発電装置は、プラスチックフィルム上に成膜された原子レベルで薄い二硫化モリブデンから構成されており、その表面を水滴が滑り落ちるときに発電する。
従来、原子層材料の一種であるグラフェンを用いて同様の発電現象が報告されていたが、出力電圧は0.1ボルト程度だった。研究では、半導体の原子層材料である二硫化モリブデンを用いて、センサデバイスを駆動するのに十分な高い出力電圧を得ることに成功した。
この発電技術は、流体の存在する様々な環境下で自己給電型IoTデバイスの電源として利用できる。発電装置はプラスチックフィルム上に形成され、柔軟性があるため、配管の内側の曲面などへの設置も可能で、高い設置自由度がある。雨滴から発電する自己給電型の雨量計や酸性雨モニタ、工場排水から発電し同時に排水の水質モニタリングを行う自己給電型水質センサなどのIoTデバイスへの応用が考えられるという。
論文情報:【Nano Energy】High output voltage generation of over 5 V from liquid motion on single-layer MoS2