プラムポックスウイルス(PPV)の海外からの侵入・拡散に、一時的な弱毒化が関わっていたことを、東京大学の前島健作助教らの研究グループが発見した。

 近年、デング熱や豚コレラのように、国内に常在しない感染症の予期せぬ発生が相次ぎ、社会問題となっている。
果樹の最重要病原体の1つで、侵入が警戒されていたプラムポックスウイルス(PPV)は、2009年に初めて侵入が確認された。その後、根絶事業に伴う累計約300万本に及ぶ全国調査により、関東から関西にわたる12都府県で感染樹が発見されたが、そのほとんどは感染理由が不明で、PPVの国内への侵入と拡散の原因や経路はわかっていなかったという。

今回、本研究者らは国内の発生地域から網羅的に集められた200以上のPPV分離株の全ゲノム配列を決定し、大規模かつ高精度な分子疫学解析を行った。その結果、西ヨーロッパから別々に侵入したと推察される2つの異なる集団が存在しており、PPVの侵入が西ヨーロッパから2度にわたって起きたことがわかった。

また、この2集団はそれぞれ関東と関西を中心に分布しており、関東では東京都、関西では大阪府を中心に各地へ分布を拡大したことがわかった。さらに、関西のPPVは日本への侵入時に特定のアミノ酸部位を弱毒型に変異させ、その後の国内での拡散過程で、本来の病原性を回復したり、従来にはなかった新たな病原性を獲得するなどしていたことがわかった。このような一時的な弱毒化は、PPVが検疫をくぐり抜けて分布拡大する際に有利に働いたと考えられ、一時的に弱毒化した後に病原性が回復あるいは多様化するという感染症の分布拡大における新たなメカニズムが判明した。

 同様の仕組みによって感染症の予期せぬ侵入が今後も起きる可能性があることから、極微量の病原体であっても検出できる超高感度検査技術の開発・普及など、対策のさらなる高度化の必要性が示されたと言える。

論文情報:【Molecular Plant Pathology】Intra-strain biological and epidemiological characterization of plum pox virus

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