国立がん研究センター、慶應義塾大学、理化学研究所の研究グループは、乳がんタモキシフェン療法における遺伝子型に基づく個別化治療の有効性について世界初の前向き臨床試験を実施。低代謝活性の遺伝子型を持つ患者に対して、タモキシフェン増量による治療効果の向上は認めず、遺伝子型に基づく用量個別化は不要との結論に達した。

 タモキシフェンはホルモン療法薬の1種で、ホルモン受容体乳がんの手術後の再発抑制や、転移のある患者の病勢を抑える治療に用いる。ただし、内服後に肝臓のCYP2D6酵素が、タモキシフェンを有効な形に変換すると、がんに効果を生じる。この酵素の活性には民族差や個人差があり、日本人の約7割は遺伝的に活性が低い。低活性の場合、現状のタモキシフェン内服量で十分かどうかは、過去の多数の後ろ向き(過去の患者データによる)研究で相反する結果が示され、結論は出ていなかった。

 研究チームは全国54施設との共同で、乳がんタモキシフェン療法における遺伝子型に基づく個別化治療の有効性について世界初の前向き(将来に向けた追跡調査)の無作為化比較試験を実施。CYP2D6低代謝活性の遺伝子を持つ乳がん患者を対象に、従来の標準的なタモキシフェン治療と2倍量の増量治療とを前向きに比較し、個別化治療の必要性について研究した。

 その結果、低代謝活性の遺伝子型を有する患者に対して、タモキシフェン増量による治療効果の向上は認めず、遺伝子型に基づく用量個別化は不要と結論し、低活性遺伝子型は治療上の不利益とはならないことを確認した。今回、日本人への影響が大きい議論について、高いエビデンスを得られる前向き研究で調査し、世界に向けて発信できたとしている。

論文情報:【Journal of Clinical Oncology】CYP2D6 Genotype–Guided Tamoxifen Dosing in Hormone Receptor–Positive Metastatic Breast Cancer (TARGET-1): A Randomized, Open-Label, Phase II Study

慶應義塾大学

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