米アリゾナ大学の猪俣健教授、茨城大学の青山和夫教授らの国際調査団が、メキシコのタバスコ州にあるアグアダ・フェニックス遺跡をレーザーによる航空測量などで調査したところ、マヤ文明最古かつ最大の公共建築を発見した。研究成果は学術誌「Nature」(6月4日電子版)に掲載された。
今回、航空レーザー測量(ライダー)と地上探査により発見した、アグアダ・フェニックス遺跡最大の人工公共建築は、南北1413メートル、東西399メートル、高さ15メートルの大基壇。あまりに巨大でこれまで地上からは確認できなかった。この公共建築を中心に幅50~100メートル、最長6.3キロメートルに及ぶ計9本の舗装堤道が建造され、人工貯水池が配置された。また、発掘調査と69点の試料の放射性炭素年代測定により、大公共建築が、住生活と土器使用が始まって間もない前1000から前800年にかけて建造・増改築されたことが分かった。
従来の学説では、マヤ諸王朝が確立した古典期(後250~950年)がマヤ文明の最盛期と考えていた。アグアダ・フェニックス遺跡の大公共建築は、建造物体積で古典期の神殿ピラミッドなどをはるかに凌駕し、スペイン人が侵入した16世紀以前の全マヤ文明史を通して最大の建造物であることが確認された。
古典期マヤ文明の垂直的な神殿ピラミッドは、諸王の権力を誇示した。これに対し、諸王が擁立される前の先古典期中期の平面的な大基壇は、人々が参加する共同体の祭祀の場であり、集団の統合を象徴したものという。大規模建築という共同作業が、定住生活が始まる大転換期に、集団のアイデンティティ創生に重要な役割を果たしたとしている。
論文情報:【Nature】Monumental architecture at Aguada Fénix and the rise of Maya civilization