冬場に水田に水を貯える「冬水たんぼ」という農法が、河川や湖沼の富栄養化を招くリンの流出を26%低下させることを、広島大学、京都大学、総合地球環境学研究所の研究チームが突き止めた。冬水たんぼが生物多様性を回復させることは過去に報告されているが、流域の水質保全にも有効であることが分かった。
広島大学などによると、研究したのは、広島大学大学院先進理工系科学研究科の石田卓也助教、京都大学生態学研究センターの奥田昇准教授、総合地球環境学研究所の池谷透外来研究員ら。
石田助教らは滋賀県甲賀市で冬水たんぼを実施した水田と未実施の水田計10カ所から土壌を採取、実験室で肥料を加えてリンの濃度に影響するアルミニウム、カルシウムと、表面水に含まれるリンを吸収すると仮定した藻類の量を調べるため、クロロフィル濃度を測定した。
その結果、冬水たんぼが肥料に由来するリンの流出を平均して26%抑制していた。表面水に含まれるリン濃度は冬水たんぼの効果が出たところと、そうでないところがあったが、効果が出たところではリンが鉄に吸着され、土壌に取り込まれていると考えられた。
しかし、クロロフィル濃度は実施、未実施で大きな差がなく、研究チームは田起こしの際に土壌がかき混ぜられることで測定しにくくなったとみている。
リンが水田から流域に流出しすぎると、栄養塩が過剰になる富栄養化を引き起こす。池や沼などの停滞水域では、光合成が停止する夜間に酸素の消費量が増えて水中が酸欠になり、赤潮の発生、悪臭の原因になる。
論文情報:【Limnology】Effects of winter flooding on phosphorus dynamics in rice fields