東京大学の金子邦彦教授らは体内時計に関わる化学物質の量に着目することで、その周期が約24時間とほぼ一定になる理由を明らかにしました。時差ボケの治療に役立つ知見となる他、生物がどのようにして環境に適用しているかを解明する足掛かりとなるでしょう。

 バクテリアからヒトまで、多くの生物は24時間周期の体内時計を持っており、たとえずれてしまっても一日の温度変化を頼りに時刻合わせをすることができます。一方で時刻合わせをしても周期自体は24時間からほとんど変わることはありません。このように環境に適応する柔軟性と、環境が変わっても変化しない頑健性の両立が正しいリズムで生きていくためには不可欠ですが、なぜそれが可能なのかは約60年にわたって謎とされてきました。

 グループはこの謎に迫るために体内時計のメカニズムに関連する化学物質の働きを詳しく調べました。体内時計はある化学反応の進行が砂時計のように働いて周期を決めていますが、通常は温度の変化によって反応の速度も変化します。これに対して、体内時計のシステム内には反応速度の変化を打ち消して一定に保つ作用がある物質が存在することが分かりました。さらに温度変化に応じてこの物質の量を調節することで、体内時計の周期が一定に保たれていることを突き止めたのです。

 こうして体内時計が環境に適応する仕組みを明らかにすることができました。また環境が変化する影響を体内の物質の量を調整することで打ち消すというのは、生物が持つ他の機能でも共通するのではないかと期待できます。今回の発見は生物が環境に適応する原理を解明する足掛かりになると期待できます。

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