名古屋大学の大野欽司教授らの研究グループは抗てんかん薬・抗パーキンソン病薬として使われているゾニサミドがマウスの神経細胞で突起の延長促進作用があることを明らかにしました。外相による神経障害を治療する効果が期待できるということです。
ドラッグリポジショニングとは特定の疾患への効果をもつ薬剤が、別の疾患に対しても有効な作用を持っていないかを見つけ出すことです。知られていなかった作用や、もともと副作用として知られていた作用が使い方によって別の疾患に有効なことがあります。例えばかつて妊婦のつわりの薬として使われていたサリドマイドは障がいを誘発することから発売中止となりましたが、その後の研究でハンセン病の合併症に効果があることが確認されています。このように使われなくなった薬、あるいは既に使われている薬の新たな使い方を検討することは新薬開発にかかるコストを抑えるために注目されています。
抗てんかん薬・抗パーキンソン病薬として使われるゾニサミドは1989年から抗てんかん薬として使われています。2001年にはパーキンソン病に対する効果があることが分かり、2009年に同疾患への適用が承認されました。さらに、今回の研究ではマウスの神経細胞において、突起の成長を促進させる効果があることを確認しました。外傷などによって傷ついた末梢神経の治療効果が期待できると言います。ヒトでの薬効に関しては、今後iPS細胞から作製した神経細胞を用いて確認していくとしています。
ゾニサミドは別の疾患に対して既に多くの使用例があることから、安全性が確認されているという利点があります。このようにドラッグリポジショニングは、一から新薬を開発するのに必要な過程の一部をパスできるという利点があります。今後、他の薬でも新たな薬効がどんどん見つかることを期待したいです。