名古屋大学の石黒直樹教授、大野欽司らの研究グループはドラッグリポジショニング戦略によって胃酸分泌阻害薬として広く使われているランソプラゾールが骨の成長促進に効果があることを確認しました。安価な骨粗しょう症治療薬としても使える可能性が出てきました。
今回注目したのは骨粗しょう症や骨折の治療です。Runx2という遺伝子は、未分化の細胞が骨の形成や修復を行う骨芽細胞へ分化するのに関わっています。研究チームは様々な医薬品の中から、Runx2の遺伝子の活性を上げる効果があるものを調べました。実際にマウスの細胞に投与し効果を観察したところ、ランソプラゾールという薬剤が有効であることを突き止めました。ランソプラゾールは胃酸分泌を抑えるために1992年から使用されています。また骨折したラットに投与すると、回復が促進されることも確認することができました。また、分子レベルでのメカニズムの解明にも成功しています。
骨の形成を促進して骨折治療を早める薬剤はいまだ開発されていないため、その候補となる物質を特定したことには大きな意味があります。さらに、各国で20年以上にわたって医薬品として使用されてきた物質であることも、臨床応用に向けて大変なメリットとなるでしょう。