広島大学の木原康樹教授、茶山一彰教授らは理化学研究所と共同でブルガダ症候群の発症リスクを低減する遺伝子を発見しました。突然死の予防や不要な治療の抑止に役立つ可能性があるとしています。
ブルガダ症候群は2千人に1人が発症する病気で普段は全く症状がありませんが、不整脈によって突然死を起こすことからポックリ病とも呼ばれています。近年は心電図などから早期発見することが可能になっており、突然死の予防のために除細動器を埋め込むなどの治療が行われます。しかしながら突然死のリスク予測は確立されておらず、治療が不要なケースでも除細動器を埋め込む治療が行われるケースがあると考えられています。ハイリスク、ローリスクの選別を正確に行うことができれば患者の体に無用な負担をかけることはなくなり、医療費の削減にもつながります。
最近の研究から心臓の発生に関わるHEY2という遺伝子の変異が、突然死のリスクを高めているのではないかと考えられています。そこで今回の研究ではブルガダ症候群の人95名と健康な人1978名を対象にHEY2遺伝子の変異の有無を調べました。その結果、ブルガダ症候群の患者では変異を起こした遺伝子を保有している率が高く、特に死に至る可能性がある不整脈が現れている人ではさらに高まることが分かりました。さらに約3年から7年にわたって患者の経過観察を行いました。その結果、これまでの予測に反して変異を起こしている人では致死性の不整脈の発症が抑えられる傾向があることが分かったのです。
この発見によってこれまでリスクを高めると考えられていた遺伝子の変異が、実は死亡リスクを低減させている可能性があることが分かりました。今後はこの成果をもとにリスク評価の方法を確立することを目指すとしています。また、突然死予防のための薬の開発にもつながる発見として期待されています。