北海道大学と茨城大学の研究チームは、茨城県北茨城市の五浦(いづら)海岸周辺に広く分布する炭酸塩コンクリーションが、約1,650万年前の地下深部の油ガス田から流出した天然ガスが化学変化し、形成されたことを解明した。
五浦海岸は奇岩奇礁を有する景勝地。その岩礁は炭酸塩コンクリーション(炭酸カルシウムが主成分の岩塊)でできた硬い塊状や層状の堆積岩から成る。海底の冷湧水に伴うメタンに由来するとみられるが、メタンの起源や成因など不明だった。
研究チームは、炭酸塩コンクリーションから採取した試料の観察やガス成分の測定、残留ガスや炭酸塩の同位体組成の測定、さらにメタンの化学変化に関与する嫌気的メタン酸化アーキア(古細菌)の分子化石の分析を行った。その結果、炭酸塩炭素の大部分が天然ガス由来であり、天然ガス成分のメタンから生成した重炭酸イオンが海水中のカルシウムイオンと結びついて炭酸塩コンクリーションを形成したことが分かった。
約1650万年前に地殻変動で海底の油ガス田に亀裂が生じ、天然ガスが数万年間継続的に湧出。その結果形成された炭酸塩の体積は600万立方メートル以上で世界最大級だ。海底への湧出天然ガスの一部だけが炭酸塩を形成するため、実際に流失した天然ガス量は莫大になる。これは五浦地域に巨大ガス田に匹敵する油ガス田(可採埋蔵量950億立方メートル以上)が存在したことを示す。幻の「五浦油ガス田」には原油も存在したとされ、茨城県沖に石油天然ガス資源が存在する可能性が一挙に高まった。
2019年度より日本の新三次元物理探査船「たんさ」が日本周辺海域の地下資源探査を実施。茨城県沖も重要な調査対象とされ、今後の進展が期待される。