北海道大学の北島正章助教らと米国テュレーン大学の国際共同研究グループは、米国ルイジアナ州の下水試料から新型コロナウイルスRNAを検出することに成功した。本研究成果は、米国を含む北米大陸で初めて下水試料から新型コロナウイルスRNAを検出した事例として論文発表された。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病因である新型コロナウイルスは、約半数以上の感染者の糞便中に排出されるため、下水中の新型コロナウイルスを調査することで下水処理場の処理区域内のCOVID-19の流行状況が把握可能とされる。北島助教らの研究グループは、このような下水疫学調査の重要性を世界に先駆けて提唱し、国内外の下水等の環境試料中の新型コロナウイルスの存在実態調査や、その手法の開発等の研究に取り組んでいる。
今回、米国ルイジアナ州南部の2ヶ所の下水処理場で、2020年1月から4月にかけて下水試料(流入水7試料、二次処理水4試料、塩素消毒後の放流水4試料)を採取し、新型コロナウイルスの存在実態調査を実施。検出には2種類のウイルス濃縮法と2種類のリアルタイムPCR法が用いられた。その結果、調査対象地域における感染者数が増加した後の流入水から新型コロナウイルスRNAが検出された。
研究成果は、『Science of the Total Environment』誌オンライン版に査読付き研究論文として掲載された。下水試料からの新型コロナウイルスRNA検出は、北島助教と山梨大学の原本英司教授の研究グループが国内初の事例を先行して論文発表している。現在、米国の研究グループが立ち上げ北島助教ら日本の研究者も参画するCOVID-19の下水疫学に関する世界的な調査研究プロジェクトが進行中だ。今後は国際的連携による下水疫学調査の進展が期待される。