東京都市大学の室田昌子教授は、東京都心部から離れた「遠郊外住宅地」における住宅建物・庭の環境状態と居住者の管理力について調査・分析し、「居住環境マネジメントビジネス」の実施を提案した。

 都心部から遠い郊外住宅地は急速な人口減少が見込まれる。東京駅から50km圏域内の「遠郊外住宅地」は、長期不在・取り壊し予定の「その他空き家」の割合が5~11%と高く、1970年代後半から90年代に宅地開発で住宅が急増したが、2000年代に都心回帰が進み高齢化と1人暮らしの増加がみられる。

 研究では2017年から2本立てで、遠郊外住宅地での住宅利用の実態を調査した。環境不全チェックリストを作成し、住宅地内で目視により建物外観の実態を把握。居住者に空き家問題への懸念、居住環境の管理などのアンケート調査も行った。

 その結果、遠郊外住宅地の住民は、空き家化や環境悪化の不安が極めて大きいが、1970年代後半~90年代に入居が進んだ住宅地では、管理状態に大きな問題のある住宅は少なかった。しかし、1970年代前半に開発された住宅地は、傷みや劣化のある建物が多く、庭の手入れに問題があり、利便性の低い場所や傾斜地にある住宅などで劣化が進んでいる。

 また、庭付き戸建て住宅で、住民が良好な居住環境を維持できる力を測定。60歳未満の現役世代、単独世帯、後期高齢者が低い傾向にあり、現役世代の自己評価が極めて低い一方、近隣の庭などの清掃管理への協力意向は60歳代、70歳代が高かった。

 郊外住宅地の持続力向上には、空き家以前の予防として居住環境管理を必要とし、エリアの環境不全化を予防する「マネジメント組織」を早急につくる必要があるとしている。

参考:【東京都市大学】空き家が増える「遠郊外住宅地」復活のため、 居住環境マネジメントビジネスを提案

大学ジャーナルオンライン編集部

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