慶應義塾大学理工学部の井上正樹専任講師、電気通信大学大学院情報理工学研究科の定本知徳助教、米ノースカロライナ州立大学のアランヤ・チャクラボルティー教授らの研究グループは、再生可能エネルギー発電の導入で劣化した電力系統の安定度を回復させる制御方法を開発した。

 電気通信大学によると、太陽光発電などの再生可能エネルギーは今後、ますます導入が進められると考えられているが、発電量が天候などに左右されることから、電力系統にさまざまな影響を与えることが報告されている。

 電力供給量が大きく変動するため、需要量とのバランスを保つのが難しいうえ、系統安定度の劣化を招き、発電機の脱調やそれに伴う停電を引き起こす可能性がある。再生可能エネルギーを大量に導入した電力系統では、高い信頼性で運用を続けるために、系統安定度の回復技術が不可欠とされる。

 研究グループは電力潮流状態が系統安定度に大きく寄与することを見つけ、系統安定度を回復させる電力潮流状態の制御アルゴリズムを開発した。シミュレーションしたところ、電力系統に乱れが出ても、電力潮流状態を適切に制御することで系統安定度が向上した。

 研究グループは出力調整が可能な火力発電の有効電力量、無効電力量の調整などと組み合わせることで経済性と系統安定度の向上を両立できるのではないかとみている。

論文情報:【IEEE Transactions on Smart Grid】Optimal Power Flow Design for Enhancing Dynamic Performance: Potentials of Reactive Power

大学ジャーナルオンライン編集部

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