名古屋大学とカナダ・アルバータ大学、愛知医科大学、神戸大学、浜松医科大学などの共同研究により、幼少時の家庭環境と個人のオキシトシン受容体遺伝子多型が「信頼」に影響を与えることが新たにわかった。

 「信頼」は、社会経済的地位の低い家庭環境で育つと醸成されにくいことが知られている。一方、対人的なコミュニケーションを促すとされるペプチドホルモン「オキシトシン」の受容体をコードする遺伝子の塩基配列の違い(遺伝子多型)も信頼に影響を与える可能性があると考えられている。しかし、これまでの研究では、社会経済的地位以外の家庭環境や遺伝的個人差とその相互作用が信頼にどう影響を与えるのかは検討されてこなかった。

 そこで本研究では、親の接し方や家庭内の秩序の程度といった指標によって評価された家庭環境と、オキシトシン受容体遺伝子多型の個人差と信頼の関連を比較文化的に検討するため、日本とカナダで学生を対象とした研究を行った。その結果、親からの愛情不足や虐待に代表されるようなストレスの高い家庭環境で育ったと回答していた人ほど、他者への信頼が低くなっていた。そして重要なことに、この関係はオキシトシン受容体遺伝子多型による影響を受けていた。日本人、カナダ人に関わらず、オキシトシン受容体遺伝子AAを持つ人では、幼少時の家庭環境に問題があるほど信頼の程度が低くなっていたが、オキシトシン受容体遺伝子AGやGGを持つ人では、こうした関係が認められなかったという。

 本研究結果は、信頼の醸成にあたって環境と遺伝的個人差の両方を考慮する必要があることを明確に示した初めての知見だ。信頼の醸成に寄与する要因を理解する上で、特に北米に比べ他者一般への信頼が低いとされる日本において、重要な示唆を与えるものだといえる。

論文情報:【Psychoneuroendocrinology】Oxytocin Receptor Gene (OXTR) and Childhood Adversity Influence Trust

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大学ジャーナルオンライン編集部

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