東北大学の坂巻竜也助教・大谷栄治教授らの研究グループは、地球の内核に含まれる軽元素の有力候補として「水素・珪素・硫黄」が含まれることを突き止めました。兵庫県立大学の福井宏之助教、高輝度光科学研究センターの筒井智嗣主幹研究員、理化学研究所のアルフレッド・バロン准主任研究員らとの共同で行われたこの研究成果は、米国科学雑誌「Science Advances」において公開されました。
地球外の天体からサンプルを持ち帰ることは可能となりましたが、地球の内部から試料を取得することはまだ実現できていません。地球の中心に存在する核は、金属鉄を主成分とし、固体である内核と液体である外核で構成されています。地球の最深部にあたる内核の化学組成については、主成分の鉄のほかにニッケルが存在し、さらに水素・炭素・酸素・珪素・硫黄などの軽い元素も含まれていることは示唆されていますが、どの元素が含まれているのかははっきり分かっていませんでした。
物質の化学組成などの違いによって異なる伝播速度を示す「弾性波」は、物質の性質を知る指標となります。本研究ではその特徴を利用して、地球最深部の化学組成を推定しようと試みました。弾性波の中でも縦波速度に着目し、地球内部と同じ環境下(超高圧高温状態)を作り出した中に純鉄をおき、密度と縦波弾性波速度を同時に測定することで、地球の内核の化学組成の推定を行いました。
そして実験で得られた結果を地震波観測データと直接比較したところ、地球内核に含まれる軽元素は「水素・珪素・硫黄」である可能性の高いことが分かりました。これは地球内核の組成に制約を与える上で重要な研究成果です。
地球の内核を理解することは地球の成り立ちを考える上で不可欠ですが、本研究によって、その解明を進める上での大きな指針が提示されたことになります。この結果をもとにさらなる研究・実験が進められ、地球内核の組成解明がなされることが期待されています。