山形県立自然植物園の自然観察ガイド長岡信幸氏と京都大学生態学研究センターの酒井章子教授、国立森林総合研究所の直江将司主任研究員らのグループは、山形県の月山山ろくに分布するウリ科植物のミヤマニガウリが秋になると実を葉で包み、温室のような状態を形成していることを突き止めた。
京都大学によると、長岡氏は長年、自然植物園で観察を続ける中、2008年にミヤマニガウリが秋になると実を葉で包むことを発見した。葉が寒さから実を守っているのではないかと考え、酒井教授や直江主任研究員らと2018年に共同調査したところ、葉で包むことによって実の成長を促していることが確認された。
ミヤマニガウリは1年生のつる植物。盛夏に開花し、季節が進むと葉が実を包んでいく。葉の内部は温度変化が少なく、温度自体も晴れた日で最大4.6度高くなっていた。実を包む葉を取り除くと、実の成長や生残率が下がった。
植物の葉は光合成をするための器官だが、ミヤマニガウリの葉は葉緑体が少ない。温室のような状態を形成することで、山形の厳しい冬の寒さをしのぐだけでなく、昆虫がやってくることを妨げていた。研究グループは開花や結実のための葉がこれまで知られていないことから、実を守ることに特化した極めて珍しい葉だとしている。