北海道だけに分布するが、数が減少して「幻の魚」と呼ばれるイトウが、道内7河川に生息している可能性があることが、北海道大学大学院農学研究院の荒木仁志教授らの調査で分かった。川の水からイトウのDNAを検出したもので、うち2河川は過去に捕獲などの事例がなく、生息している可能性が初めて明らかになった。
北海道大学によると、荒木教授らの研究グループは2015年から2018年に道内120の河川で採水し、イトウのふんやはがれた表皮などから出たDNAが含まれていないかを調べた。
その結果、道北の宗谷総合振興局、留萌振興局、道東の釧路総合振興局、十勝総合振興局、道央の日高振興局、道南の渡島総合振興局管内の7河川でイトウのDNAを見つけた。しかし、見つけたDNAの56%が道北の宗谷総合振興局管内、39%が道東の釧路総合振興局管内。それ以外の地域ではわずかな量しか確認できず、絶滅の危機に直面していることが推計された。
この解析結果に基づくイトウの分布図に地理情報システムの地形や土地のデータを組み合わせると、イトウが生息する環境として流域の起伏が穏やかで、湿地やラグーン(※1)が存在することが分かった。
イトウはサケ科に分類される日本最大の淡水魚。体長1メートル以上に成長し、かつて2メートルを超す大物が捕獲されたことがある。東北地方にも過去に生息していたが、すでに絶滅した。北海道のイトウも環境省レッドリストで絶滅危惧種に分類されている。
※1 ラグーン かつて海だった場所が砂州の発達などで外海から隔離され、湖沼化したところ