大阪大学産業科学研究所の研究グループは、1枚の歩行画像で分析可能な歩容認証手法を開発した。

 歩容認証とは、歩き方(歩幅・腕振りの大きさ・背筋の伸び等)の個性に基づいて個人を認証する技術で、指紋や顔など他の生体情報と異なり、カメラから遠く離れた場所でも利用できる唯一の生体情報として、防犯カメラ映像を用いた科学捜査への活用が進んでいる。しかし、従来手法では、1周期(左右2歩の約1秒分)の歩行映像を用いるものが主であり、認証までのタイムラグが生じてしまうことや、混雑環境下で全身像が一瞬しか観測されない状況では利用が困難といった問題があった。また、任意枚数の歩行画像を入力とする歩容認証手法も提案されているものの、1枚の歩行画像では認証精度が大幅に低下するという問題を抱えていた。

 そこで本グループは、1枚の歩行画像からその歩行姿勢を推定して、1周期分の歩行映像を復元する深層学習モデルを開発した。これを、従来の様々な歩容認証手法と組み合わせるために、歩容認証の深層学習モデルと組み合わせてモデルパラメータを学習させることで、1枚の歩行画像から1周期を復元し歩容認証を行う新技術を生み出した。

 この手法の認証精度を約10,000人の公開歩行映像データベースを用いて評価したところ、従来手法と比較して、認識誤り率は約15分の1となり、登録人数を約5,000人とした場合における個人識別の1位認証率は約5.5倍に改善された。

 本成果により、1枚の歩行画像しか利用できない場面や、リアルタイム性が必要とされる場面においても歩容認証が可能となり、たった1枚の歩行スナップ写真からの歩容鑑定や、全身像が一瞬しか見えないような混雑環境下での防犯・監視などに応用が期待される。

論文情報:【大阪大学 産業科学研究所】「未来科学捜査」歩容鑑定

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