日本電信電話株式会社(NTT)、名古屋大学、北海道大学は共同で、中性子の持つエネルギーごとの半導体ソフトエラー発生率を「連続的な」データとして実測することに、世界で初めて成功した。
宇宙から降り注ぐ宇宙線が、大気圏中の酸素や窒素に衝突すると中性子が発生し、この中性子が電子機器の半導体に衝突すると、保存データが書き変わる現象「ソフトエラー」(注)が生じる。今後、半導体の高集積化・微細化が進むと中性子の影響を受けやすくなり、ソフトエラーによる故障を考慮した半導体・システム設計が重要となる。
多様な環境でのソフトエラーによる故障数の算出には、ソフトエラー発生率のエネルギー依存性(中性子が持つエネルギーごとのソフトエラー発生率)の詳細なデータが不可欠。しかし、従来は飛び飛びのエネルギーに対応したデータしか得られず、ソフトエラーによる故障数を正確に算出できなかった。
研究では、光速に近い中性子のエネルギーを「飛行時間法」で特定するため、数ナノ秒(10億分の数秒)でソフトエラーを検出できる高速エラー検出回路を開発した。実験は米国ロスアラモス国立研究所の高出力800MeV陽子線形加速器施設で実施。その結果、1MeVから光速に近い800MeVまでの非常に広範囲なエネルギーの中性子によるソフトエラーの測定を可能とした。
これにより、地上から上空・宇宙・他惑星などあらゆる環境下での中性子起因ソフトエラーの故障数を算出できる。今後、宇宙ステーションでの半導体信頼性の評価、半導体の材料レベルのソフトエラー対策、加速器によるソフトエラー試験、さらにはソフトエラーの発生過程シミュレーションへの適用など、さまざまな領域への貢献が期待される。
注:デバイスの再起動やデータの上書きによって回復する一時的な故障。