過去に経験したことがない報酬を前にして自制心が強い人ほど脳の活発な活動を示すことが、慶應義塾大学理工学部生命情報学科の田中大輝大学院生と地村弘二准教授、高知工科大学情報学群の中原潔教授、竹田真己特任教授、青木隆太助教(当時)らの研究で明らかになった。
慶應義塾大学によると、研究グループは被験者の脳活動を機能的MRI(磁気共鳴画像)で計測しながら「しばらく待つが、たくさん飲めるジュース」と「すぐに飲めるが、少量しかないジュース」を飲ませ、どちらかを選択するよう求めた。
その結果、脳の前頭前野が将来の期待を反映して活動し、「しばらく待つが、たくさん飲めるジュース」を選択した自己制御の強い人ほど前頭前野の活動が活発になっていることが分かった。
研究グループは、経験したことがない好ましい出来事を期待しているとき、前頭前野の活動が活発であるほど、長期的に利益が大きい方を選択することを示唆しているとみている。
すぐ得られる少量の報酬と待つことが必要な多量の報酬のいずれを選ぶかは、行動経済学で異時的選択と呼ばれ、前者を衝動的、後者を自制的とみなしている。しかし、これまでヒトでの研究で選択の好みがどのように形成され、未経験の報酬を待つときにどんな変化が脳内で起きているかは、分かっていなかった。