東京大学大気海洋研究所の横山祐典教授らの合同チーム(他に米国ライス大学とイェール大学)は、大陸地殻の成長と大気中酸素濃度の段階的上昇の間にある密接な因果関係を明らかにしたと発表。地球科学的情報の統合的解釈と地球表層圏についての炭素循環モデルを駆使したという。
他の惑星と異なり現在の地球表層には遊離酸素が豊富だ。究極的原因は光合成生物による酸素の生成だが、それだけでは説明できないという。地球史には2度の大きな酸素濃度上昇期が存在。約25~20億年前の大酸化イベント(GOE)と約7~5億年前の新原生代酸化イベント(NOE)だ。しかし、この2つの上昇期が生じた理由とそのメカニズムは不明だった。
研究チームはジルコン(ZrSiO4)という鉱物のウラン-鉛年代測定結果の再解釈や岩石学的考察などを実施。プレートの沈み込みに伴い地球内部に大量の水が供給された結果、約27~25億年前に大陸地殻の組成が苦鉄質から珪長質へと変化したことを突き止めた。鉄やマグネシウムが多い苦鉄質岩石はケイ酸に富む珪長質岩石より大気中から酸素を取り除く作用が強い。GOEの発生は、珪長質の大陸地殻形成により大気中の酸素消費が激減したためとしている。
また、プレートテクトニクスの確立後、地球表層圏の炭素が炭酸塩や有機物として大陸地殻上に堆積した。その結果、2度目の酸素濃度上昇(NOE)が生じたことを数理モデルにより解明。NOEは多様な動物群の出現(エディアカラ動物群の出現やカンブリア爆発)に関連があるといわれる。
本研究は新たな地球観の提示だという。プレートテクトニクスに伴う惑星規模の超長期物質循環が、富酸素の大気を生じて高等生物を宿す惑星を実現したというものだ。