九州大学大学院医学研究院の山﨑貴男学術研究員と飛松省三教授は、同大学病院物忘れ外来との共同研究により、軽度認知機能障害(MCI)の早期診断バイオマーカーを発見したと発表。身体に無害な上に、低コストで信頼性があるとしている。

これまで、早期診断バイオマーカーとして脳脊髄液検査やアミロイドイメージング(アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドの脳内蓄積量を検査するもの)が報告されている。しかし、侵襲性やコストの問題が指摘されており、理想的なバイオマーカーはいまだに確立されていないという。

 ヒトが直進方向に移動すると外界の放射状の動きが網膜上に生じるが、これはオプティック・フロー(OF)と呼ばれる。研究グループは2012年に、誘発脳波を用いて、認知症の予備群であるMCI患者では、OFに対する脳反応が特異的に低下していることを報告していた。今回、その研究をさらに発展させ、新たな患者群でOF刺激は高い特異度、高い感度をもって、MCI患者と健常老年者を区別できることを発見した。

 今回の研究成果から、誘発脳波検査は身体に害を及ぼさない上、安価かつ信頼性のあるMCIの早期診断バイオマーカーとなるとしている。また認知症患者の迷子、危険運転が社会問題となっているが、これらはOF知覚の障害と関連があることから、同手法は迷子や危険運転の起こしやすさの判定にも利用できると期待される。

 将来的には、MCIよりもさらに早い段階(臨床症状が出る前の時期)で、認知症予備群を発見できるようなシステムを構築し、先制医療に貢献したいと語る。

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