新型コロナウィルスの重症患者増加に対応するための地域間医療シェアリング戦略を提案するシミュレーション手法を、京都大学の研究グループが開発した。
我が国でも新型コロナウィルスの感染者と重症患者が増加し続け、今まさに医療現場は医療崩壊の危機にさらされている。受け入れ病床の逼迫、医師・看護師人材の不足により、特に単一都道府県、単一医療圏では、入院患者の受け入れが困難となることが懸念される。
そこで本グループは、周辺地域が連携して医療リソースを最適に割り当てる(シェアリングする)ためのシミュレーション手法を開発した。具体的には、重症病床使用率が100%を超えた都道府県が発生した場合に、周辺地域が保有する重症病床数を分配(シェアリング)することで、すべての都道府県が保有重症病床数の上限を超えない条件のもと、重症病床使用率を緩和できることをシミュレーションにより示したという。
さらにこれを、Googleが公開するCOVID-19感染予測AIによるデータと組み合わせた。Googleの感染予測および厚生労働省が発表する都道府県ごとの重症者数比から、都道府県ごとの今後の重症者数を予測し、近く重症病床数の限界を超えると予測された地域に対しては、広域エリアでの医療リソースの最適シェアリング方針を提案する。Googleや厚生労働省のソースデータが更新されるたびに解析結果も更新・即時公開するとしており、医療崩壊を防ぐための地域間医療シェアリングの必要性を早期に予測することができる。
連携可能な都道府県同士、医療圏同士が広域新型コロナ対策医療圏を策定し、本手法で提案されるような医療シェアリングを行うことは、当該地域での重症患者への均質な医療提供につながると考えられる。本研究では、刻々と変化する医療実態に対応するため、医療リソースをシェアできる広域単位のネットワーク体制を早急に構築することが肝要だとしている。
参考:【京都大学】新型コロナウィルスの重症者増加に対応するための、シミュレーションによる最適な地域間医療連携を提案(PDF)